Aevia

骨盤底筋トレーニングの基本 ― 始める前に知っておきたいこと

骨盤底筋トレーニングの基本 ― 始める前に知っておきたいこと

骨盤底筋トレーニングを始めてみたものの、「これで合っているのか分からない」「どこに力を入れればいいのか分からない」——そう感じて、途中でやめてしまった方は少なくありません。骨盤底筋は、目で見て確認することができない筋肉。だからこそ、始める前に正しい基本を知っておくことが大切です。

この記事では、骨盤底筋トレーニングの基本と、多くの方がつまずきやすいポイント、そして始める前に知っておきたい「自分のタイプ」のことを、研究をもとにやさしく整理します。

骨盤底筋とは ― なぜ大切なのか

骨盤底筋は、骨盤の底でハンモックのように広がり、ぼうこうや子宮などの臓器を下から支えている筋肉のグループです。排尿や排便のコントロールにも深く関わっていて、「縮める」と「ゆるめる」を切り替えながら、毎日静かに働いています。

この筋肉には、月経期、妊娠・出産、産後、更年期、閉経後と、女性のライフステージごとに異なる負荷がかかります。また、咳やくしゃみ、ランニングのような衝撃の大きい運動でも、腹圧(おなかの中の圧力)を通じてくり返し負荷を受けています(運動と骨盤底筋の関係は、こちらの記事で詳しく扱っています)。

つまり骨盤底筋のケアは、特別な悩みがある方だけのものではなく、どのライフステージの方にも関わる、体の土台のメンテナンスです。

トレーニングは「根拠のあるケア」とされている

骨盤底筋トレーニングは、世界中で研究が積み重ねられてきたケアです。たとえば腹圧性尿失禁に対しては、コクラン・レビュー(世界中の研究を統合して評価する国際的な仕組み)で有効性が報告されており、各国のガイドラインでも第一に検討すべき保存的ケアと位置づけられています(出典1)。

ただし、効果のあらわれ方には個人差があり、「必ずこうなる」というものではありません。だからこそ、正しい基本と、自分に合った進め方を知ることが大切になります。

つまずき① 「締め方がわからない」

多くの方が最初にぶつかりやすいのが、この壁です。「骨盤底筋を締めましょう」と言われても、どこにどう力を入れればよいのか、なかなかイメージできない——実は、それはとても自然なことです。

ある研究では、簡単な口頭の説明だけを受けた女性のうち、理想的な収縮ができていたのは約半数にとどまりました。さらに約4人に1人は、力の入れ方がむしろ逆方向——おなかに力を入れて骨盤底を押し下げてしまうような、症状の面では不利になりうるやり方だったと報告されています(出典2)。

骨盤底筋は体の奥にあり、目で見ることも、鏡で確認することもできません。「わからない」のは決してあなたのせいではなく、この筋肉の性質によるものです。

だからこそ、いきなり回数をこなすのではなく、まず「動いている感覚をつかむ」ことから始めるのが、遠回りのようでいて確実な進め方です。この「感じる」ステップについては、3つのステップの記事で詳しく解説しています。

つまずき② 「効いているか分からない」「効果を感じない」

「しばらく続けているけれど、変化がよく分からない」——そんな声も少なくありません。考えられる理由は、大きく2つあります。

ひとつは、単純に時間の問題です。骨盤底筋の変化は、日単位や週単位ではなく、月単位でゆっくり進んでいくものと考えるのが現実的です。数週間で結果を求めず、長めの目線で続けることが前提になります。

もうひとつは、見落とされがちですが——そもそも今のやり方が、自分の体の状態に合っていない可能性です。

骨盤底筋の状態は、人によって異なります。ゆるみが課題になっている方もいれば、反対に、筋肉が緊張しすぎていて「ゆるめること」が先に必要な方もいます。この2つは、必要なアプローチの方向がまったく逆。緊張しているところにさらに「締める」練習を重ねても、なかなか手応えにつながらないことがあるのです。

そしてむずかしいのは、自分がどちらのタイプなのかが、自分の感覚だけでは見分けにくいとされている点です。「がんばっているのに変わらない」と感じたら、トレーニングの量を増やす前に、一度立ち止まって自分の状態を知ることをおすすめします。Aevia のタイプチェックは、いくつかの質問に答えるだけで、いまのあなたの状態の傾向を整理する手がかりになります。

基本の流れ ― 「感じる → 鍛える → 日常へ」

骨盤底筋トレーニングの進め方は、3つのステップで考えると整理しやすくなります。

まず、筋肉が動く感覚をつかむ「感じる」。次に、その感覚を保ったまま少しずつ負荷を高めていく「鍛える」。そして、咳やくしゃみ、立ち上がる瞬間など、実際に腹圧がかかる日常の場面で使えるようにしていく「日常へ」。

それぞれのステップで何をするのか、なぜこの順番なのかは、「ケーゲルだけでは足りない ― 骨盤底筋ケアの3つのステップ」で詳しく解説しています。まずは「進め方には順番がある」ということを、知っていただければ十分です。

つまずき③ 「続かない」

最後の壁は、続けることです。骨盤底筋トレーニングは1回の負荷が小さいぶん、続けてこそ意味があるケアです。続けるコツは、意志の強さに頼らないこと。

Aevia のトレーニングも、この「続けられること」をいちばん大切に設計しています。

こんなときは受診を

次のような場合は、自己判断でトレーニングを続けず、医療機関にご相談ください。

また、妊娠中・産後まもない方や、治療中の病気がある方は、始める前に医師などの専門家にご相談ください。

よくある質問

Q. 何歳からでも始められますか? はい。60歳以上の女性を対象とした研究でも、トレーニングによる改善が報告されており、年齢にかかわらず第一に検討してよいケアとされています(出典3)。「もう遅い」ということはありません。

Q. 男性にも関係がありますか? あります。骨盤底筋は男性の体にもあり、同じように臓器を支え、排泄のコントロールに関わっています。トレーニングの基本的な考え方も共通です。Aevia のコンテンツは現在、女性のライフステージに合わせた内容を中心にしていますが、男性向けの内容も今後お届けしていく予定です。

Q. 効果はいつごろ感じられますか? 個人差が大きいため一概には言えませんが、週単位ではなく月単位でゆっくり変化していくイメージで取り組むのが現実的です。焦らず、まずは続けられるペースをつくることを優先してください。

Q. 生理周期に合わせてトレーニングを変えたほうがいいですか? 骨盤底筋トレーニングは、基本的にいつ行ってもかまわないとされています。大切なのは「周期に合わせること」よりも、その日の体調に合わせて強度や量を調整することです。月経中に腹痛・腰のだるさ・強い疲労感などがあるときは、無理をせず、量を減らしたり、呼吸を中心としたやさしい内容に切り替えたりするとよいでしょう。特に不調がなければ、ふだん通り続けてもかまいません。なお、「月経周期に合わせて段階的にトレーニングを変えるべき」という方法が標準的に推奨されているわけではありません。周期に合わせた調整は「してもよい工夫」のひとつであり、「しなければならないもの」ではない——そう考えると、気負わずに続けやすくなります。

Q. 器具は必要ですか? 基本的には必要ありません。骨盤底筋トレーニングは、道具がなくても、自分の体ひとつで始められます。まずは自分の体の感覚をつかむことから始めてみてください。

出典

  1. Dumoulin C, Cacciari LP, Hay-Smith EJC. “Pelvic floor muscle training versus no treatment, or inactive control treatments, for urinary incontinence in women.” Cochrane Database Syst Rev. 2018;(10):CD005654.(骨盤底筋トレーニングの有効性)
  2. Bump RC, Hurt WG, Fantl JA, Wyman JF. “Assessment of Kegel pelvic muscle exercise performance after brief verbal instruction.” Am J Obstet Gynecol. 1991;165(2):322–329. doi:10.1016/0002-9378(91)90085-6(口頭指導のみでは約49%しか理想的な収縮ができず、約25%は失禁を促進しうる収縮方法だった)
  3. Dumoulin C, Morin M, Danieli C, et al. “Group-Based vs Individual Pelvic Floor Muscle Training to Treat Urinary Incontinence in Older Women: A Randomized Clinical Trial.” JAMA Intern Med. 2020;180(10):1284–1293. doi:10.1001/jamainternmed.2020.2993(60歳以上の女性362名を対象、トレーニングにより漏れの回数が中央値で70%以上減少)

タイプによって、合うケアは異なります。

あなたの状態・タイプを知る

Aevia はセルフケアのためのトレーニングツールであり、医療機器ではなく、診断・治療を目的とするものではありません。気になる症状がある場合は医療機関にご相談ください。